「和尚様はどうなされたのです。」
いぶかる円心に、円修は重い口を開いた。
「実は・・・和尚様はご病気にかかられ、去年亡くなられた。」
「・・・」
円心は動揺を隠せなかった。急いで本堂へ行くと、そこには天寿和尚の位牌が置かれていた。お堂には線香の匂いがたちこめている。
「和尚様!」
円心はそう言ったきり、位牌の前にひれ伏してしまった。円心はあたりかまわず声をあげて泣いた。涙が後から後から流れ落ちた。
『私は何という愚かな弟子だ。』
何度も床をこぶしで叩いた。円心は、とうとう許しを得ることも破門されることもなくなった自分に、どうしようもない怒りをぶつけた。
『できれば・・・お許しいただけるのなら、この二年間の出来事を和尚様にご報告したかった。』
円心には、何ともやりきれないせつなさが心に深く残った。そして円心の心に居座ったその想いは、長い年月をかけて美化されて、死ぬまで消えることはなかった。痛切な想いは消えることなく続いていく。来世ではそれが別の形になって現れるとは、このとき円心は思いもよらなかった。

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